テイルズオブザレイズ軸のユアマー。結婚式イベントの話です。
まさかユアマーの結婚式が見れる日がくるなんて。
こんなことがあっていいのだろうか。
自分の密かな望みが、渇望し絶望した想いが。
一度は閉ざし、心の奥底に封じこんだ願いが。
まさかこのように叶う日がくるとは。
「…未だに信じられない」
最後の言葉は口に出ていたようだ。
傍らにいた少年は片眉をあげ、皮肉そうに笑った。
「信じられないのはこっちだよ。
こんな、ヘタレなやつが姉さまと、だなんて。」
ユアンは少年を見上げた。
その少年…ミトスは不貞腐れたようにそっぽを向く。
(ああ…)
この少年がこのようにそばにいるということも、なにかの幻のようだ。
かつて共に歩み、袂を分かち、命果てるのを見届けたはずだった。
そして彼の姉。
しばらくは、朝目覚める度にこれは夢なのではないかと疑った。
永遠の別れをつげたはずの彼女がそこにいたこと。
幾千年抱えていた想いを唇にのせ、誓いをかわしたのも。
ユアンとて、今ではその事実を受け止めてはいる。
目眩がする程の幸せをかみしめ、これでもう何も他に望むものなどないと思っていたが…
今日はその夢想のさらに先へ、未来へ一歩進むことになる。
「そんな中途半端な気持ちなら今すぐやめてよね」
ミトスが再度呟く。
ユアンはその揺れる金髪を見つめた。
「いや、迷いはない。
私はマーテルと共に生きていくことを誓った。
その言葉に嘘はない。
…お前にとっては災難かもしれないがな。」
ユアンは少し笑った。
そうだ、たとえかつてのユアン・カーフェイが全てを失ったのだとしても、私は私だ。
その事実を、幸福を素直に受け止めようではないか。
「……冗談だよ」
ミトスは振り返った。
思っていたのとは違う、静かな表情にユアンはハッとする。
「絶対幸せになってくれないと困るんだからね。
姉さまも。…ユアンも。」
そしてミトスは少し俯いた。
自然とユアンはその頭に手をのせた。
「ああ…わかっている」
くしゃっと撫でたユアンの手を掴むとミトスは言った。
「百万年早いよ」
それは少し鼻声のようにきこえた。
「…マーテル。」
「お待たせ、ユアン。」
愛しき彼女の姿は青空のもとで輝いていて、ユアンは息をのんだ。
あぁ、夢ならばいつまでも覚めないでくれればいい。
「誓おう。たとえ死が私たちを分かとうと
この愛は未来永劫不滅だ。」
手を伸ばせば握り返してくるその温かな手を二度と離さないと約束しよう。
First Written : 20XX/XX