サガフロ2リマスタークリア後の追加シナリオのネタバレを含みます。
南の砦からの空白の期間、それぞれ何を考え、どう行動したのか。
そんな妄想を詰め込んだお話です。
パチパチと火の爆ぜる音がする。それは小屋の中で焚かれた松明の音ではあったが、身体に感じる熱はそこからのものばかりではなかった。
外ではどこまで火が迫ってきただろうか。扉を護るヨハンは炎にまかれてはいないだろうか。
耳を澄ませてみても、剣戟の音は聞こえない。かわりに扉が開く重たい音がした。
誰かが、入ってくる。
モンスターか。あるいは首謀者が放った別の刺客か。
剣の柄を改めて握り直したとき、その声はきこえた。
「ギュスさまぁ!」
南方遠征の拠点、メルツィヒに築いた砦はモンスターの襲撃を受けた。一軍を率いて合流するはずだったダイクが遅れており、手勢が少ない中での夜襲であった。
偶然にしては統率のとれた魔物達は砦の中心へと迫ってきていた。誰の差し金かについては心当たりは幾らでもあった。どれだったとしても狙いは俺の首だろう。
まだ年若い者達がいる中、籠城して全滅することは避けるべきだと考えた。フリンにヴァンアーブルを託し、少しでも襲撃者の目を引きつけるために俺は砦に残った。唯一の護衛者——サソリの毒に体を蝕まれ、残されたわずかな時を俺に捧げてくれたヨハンを共に。
死を覚悟してのことだった。
だけど決して死を望んでいたわけではない。
誰に恨まれていてもおかしくないことをしながら、俺はそれでも——
フリンは命令通り、ヴァンアーブルを連れて逃げ出した。そして一人で戻ってきた。しょうがないやつだ、と思ったがどこかであいつがそうするだろうことを俺はわかっていた。
フリンはヨハンの亡骸を抱えていた。遺骸を荒らされていなかったことを見るに、ヨハンは己の言葉通りここを防ぎきったのだろう。
まるで眠っているかのように倒れたヨハン。その口元に浮かぶものに、俺は決意した。
必ず生きてこの砦を脱出してみせると。
炎がすく間近に迫っていた。