2023年5月の佐賀コラボスタイルのラベールを見ての妄想話。
同時実装のミスティの存在もありややシリアスになりましたが、らぶらぶ夫婦なウィルラベです。
海辺で潮の香りを感じながら、あたたかい湯に足をつける。ラベールは暮れゆく日を眺めながらほっと一息ついた。
本当なら隣にはウィルもいるはずだった。旅に誘ってくれたのは彼だ。見慣れぬ世界でもゆっくりと楽しめたなら、と思っていたのに。いつもとは異なる装いで、ちょっとだけ気合い入れておしゃれなんかしちゃって。
彼は可愛いよと褒めてくれた。そう、それだけで十分嬉しかった。
旅先で町を巡っている時に、ふと彼の様子が変わった。青ざめた顔で彼は、行かなければいけないと言った。だから、ラベールもいってらっしゃいと見送ったのだ。
彼が他の何よりも優先するもの、自分の命さえもかえりみずに追っていたもの、そんなものの気配を感じたなら、楽しく旅という気分には到底なれないだろう。
だから、見送った。別にそれを後悔はしていない。
ただ感じるのは、この綺麗な風景を彼の横に座って眺めたかったな、という幾ばくかの寂しさ。そして胸を切るような不安だけ。後者は見て見ぬふりをする。
ラベールは大きく息を吸い込んだ。もう少ししたら日が完全に水平線に沈んでしまう。真っ暗になる前に引き上げるべきだろう。そう思って姿勢を正しかけた時、ふと声が降ってきた。
「隣、いいかな?」
「ウィル!」
申し訳なさそうに微笑んだ彼の顔には疲労の色が見える。一日中駆けずり回ってきたのだろう。
「もういいの?」
「見失ってしまった。せっかく時間をくれたのに、ごめん」
「ううん、それはいいの」
ごめん、ともう一度言ってウィルはラベールの横に座った。靴を脱ぐと彼女に倣って温泉の湯に足をつけた。ほっと息をつくと彼は改めてラベールに向き直る。
「せっかくの旅なのに、ごめんね」
「もう、だから大丈夫だってば」
ウィルがあまりにも気落ちして肩を落とすのがおかしくて、ラベールは声を出して笑いながら自分の指を彼のものに絡ませる。
「『ウィル』は必ず帰ってきてくれるもの」
もう寂しくもないし、胸も痛くない。だから大丈夫。
「おかえり、ウィル」
「ただいま、ミシェーラ」
「綺麗な景色だね」
「うん、綺麗」
足でゆるゆると湯をかき混ぜるようにして遊びながら、ラベールはウィルと繋いだ手にぎゅっと力を込めた。しっかりと握り返してくれるのを感じながら、ラベールは傍らの夫に寄りかかって茜色に染まる海と空を眺めた。
First Written : 2023/05/13
ウィルはコーディのことがあるからラベールは連れていかないし、ラベールは帰らなかった兄さんのことを考えながらもウィルを待っていたのかなと。