ヨハンの話。
アニマを周囲と同化させる。それは自分の存在を酷く曖昧にさせるようなものだ。己を殺し、場とひとつになる。ただ標的の姿だけが何よりも鮮明に、その動きが何よりも遅く、瞬きが永遠にも思える。
研ぎ澄まされた刹那に刃を振るう。
彼が技を発するその一瞬はいつも静寂に包まれていた。
熱く血が燃える。ドクドクと脈打つものが彼の全身を流れ、耳に響いた。
それは恐怖ではない。
――彼は幸せだった。
己が信じた者の為に振るう一撃は、熱く熱く彼の胸を焼く。
歓びを灯しながら。
First Written : 2022/04/08