新婚ケルマリ。
マリーは夫が彼女の額に落とす唇の優しさが好きだ。
触れたところからじんわりと温かさが心まで満たしてくれる。彼が自分に抱いてくれた感情を大切に包んで少しずつ丁寧に贈り届けるような、そんな心持ち。
時折そこに物足りなさを感じるのは贅沢なことだろうか。額だけでは寂しいと思うのは、その先を望むのは、淑女としてあるまじきと眉をひそめられることだろうか。
でも、と彼女は考える。
そもそもこの再婚自体、ありえないと断じられるようなものであったのだ。ならば。
マリーは両の眼を最愛の人に向ける。見つめ返す瞳に宿る愛念に胸が喜び沸き立つ。
誰に何を言われようと、目の前のこの人が受け入れてくれるのならばそれで良い。
「ケルヴィン……」
自分から重ねた唇はそっと触れて離れるだけだけれど。
「マリー?!」
「……いけませんでした?」
ようやく敬称を外して呼ばれるようになった名前に胸がくすぐられる。
「いけなくは……ないです」
彼の語尾に残る丁寧さが歯痒くも、愛おしくもある。
耳まで真っ赤にした夫の可愛らしい姿に、マリーは花のようにほころんだ。
First Written : 2025/08/23
