ギュスレス。グリューゲルでの別れ捏造話。
< Side G>
ギュスターヴは旅装でグリューゲルの門の前にいた。ソフィーが集まってきた人達に別れの挨拶をしている傍ら、一人の術不能者の少年以外にギュスターヴを見送るものはいない。
別れを惜しむ声は聞こえるが、みんな内心は安堵していることだろう。常に腫れ物にさわるような扱いをされてきた彼らだ。居なくなったら清々するに違いない。
そんなことをギュスターヴが考えていたら、人だかりの奥で、一人の少女が彼らを見ていたことに気づいた。彼女はじっとこちらを見ていたかと思うと、ほのかに赤味を帯びた金髪をなびかせて立ち去っていった。
(変なやつ……)
ギュスターヴは思った。
彼がフリンを殴っているのを止めに入って以来、彼女――レスリーは何かと彼に話しかけるようになった。話しかけるといっても、喧嘩を止めたり、彼に何か物申すことがほとんどで、言うなれば口を開いたら言い争うのが常である。
きっと彼女も彼がいなくなってほっとするのだろう。こっちも口うるさく言われることもなくなる。
ギュスターヴはそう思い、そしてふと気づいた。
(あいつ、珍しく何も言ってこなかったな)
無言で立ち去った彼女はどんな顔をしていたのだろうか。
母に名前を呼ばれるまで、彼はじっと彼女が消えた方角を見ていた。