かぞえうた

ギュスレス。ひょんなことで二人きりになって、部屋を出ようとするレスリーを引き止めるギュスターヴのイメージ。


 

 ――たががはずれるとはこういうことなのかもしれない

 逃げられないように腕に閉じ込める。
 髪の毛の香りをかぎ、そこにひとつ。
 耳をさぐりあて、そこにひとつ。
 頬にひとつ。首筋にひとつ。

 「ねぇ…」

 肩にひとつ。背中にひとつ。
 腕に力を込めて華奢な腰を確かめる。

 「ギュス」

 胸に近づけた手は払い落とされた。

 ――残念。

 「ねぇ、いつまでそうしてるの」

 振り向こうとしたところで額にひとつ。

 「もうちょっとだけ」

 唇にひとつ。ふたつ。みっつ。


First Written : 2021/04/18