隠して

フリンから隠れているギュスターヴを見つけたレスリー。
※ベタ展開すぎて恥ずいので長らく公開できていなかったやつですw


 

 通りから少し奥まったところ、家と家の間の生垣から頭がのぞいていた。レスリーはそれに気づき、首を傾げた。生垣は大人の腰までの高さである。そこから頭だけ見えているというとはその人は意図的に姿勢を低くしていることになる。放っておいてもよかったのだが、なんとなく気になって彼女は道を離れ、その生垣の裏に回ってみた。
「何をしているの?」
「見てわからないか? 隠れてるんだよ」
 緑生い茂る壁から通りを窺うために目から上だけを出していた彼――ギュスターヴは、さも当然のように返す。彼が不可解な行動をとるのはよくあることだったが、今年で齢十七というのに、とレスリーは呆れながら肩を竦めた。
「誰から……?」
 彼女はそう訊ねかけて、彼の周りにいつもいる人物が見当たらないことに気づく。
「……ってもしかして、フリン?」
「うん」
「なんでまたフリンから隠れるなんて」
 本当にかくれんぼ遊びをしてるわけではないだろうに、彼から逃げるように離れる理由はなんだと言うのだろう。フリンならそう言えば距離を置くぐらいしそうなものに。
「うーん、別に」
「別に、って」
 いつもの気まぐれだろうか。ギュスターヴにも何か思うところがあるのかもしれないが、言葉少なに振り回される側の気持ちも考えて欲しいものだ、とレスリーは内心ごちた。
「ねぇ、」
「しっ……!」
 話しかけようとしたら、ギュスターヴが手のひらでレスリーの口をぱっと塞ぐ。
「ギュスさま〜」
 フリンの声がして、レスリーが顔をあげようとしたら、慌てたギュスターヴに引っ張りこまれてバランスを崩しかけた。
(あっ……)
 彼女のすぐ目の前にギュスターヴの胸があった。細身ながらもしっかりとついた筋肉、微かに汗ばんだ首筋、せり出した喉仏がごくりと下がるのがみてとれる。抱え込まれ動くこともできず、ただどくどくと流れる自分の血の音が耳にうるさく響く。
 ギュスターヴは息を潜めたままじっと動かない。やがてフリンがさらに向こうへと探しにいったことを見届けてから、彼はやっと下を見た。
 目と目が合わさる。
 呼吸が止まったかと思った永遠は本当はきっと一瞬で、ギュスターヴはさっと手をゆるめて立ち上がる。
「フリンには言うなよ」
 一言だけそう残すと、彼は何事も無かったかのように何処かへと走り去ってしまう。
(もう……どうしてくれるのよ)
 とっくに言葉を得てしまった感情が胸の中で暴れ狂う。それをぎゅっと押し込めるようにしてレスリーは自分の肩を抱いて蹲った。

 


First Written : 2024/12/07