風邪ひきケルヴィンと、幼馴染達。
「風邪だなんてだらしがないな〜」
そうやってにやにやとするギュスターヴを私は思いっきり睨んでやった。そもそも三日前に盛大に咳をしていたのは奴の方だ。ほっといてもすぐ治るとギュスターヴは豪語していたが、実際翌日にはもうけろっとしていて、その日から私の喉の調子がおかしかった。
「ケルヴィン、まだ熱があるのだから横になった方がいいわよ」
自室のベッドで上半身を起こしていた私をレスリーが心配してくれるが、ギュスターヴに見下されるのはなんだか癪で受け入れられない。
「大丈夫だ……っごほっ、ごほっ」
喋ると喉に粘り気のあるものが絡みついて会話もままならない。
レスリーが背中をさすって水をすすめてくる。ギュスターヴの顔が歪むのが目の端に見えた。ざまあみ……いや、いい気味だ。
見舞いという名の冷やかしを装って、ギュスターヴが本当のところは私ではなくレスリーに会いに来ていたことは明らかだ。
それを知ってか知らずか、レスリーの対応は存外冷たい。
「ギュス、用事がないならそろそろ出ていって」
「用事が、って」
言い返そうと口を開けたギュスターヴがレスリーの顔を見て黙り込む。結局反論の言葉が浮かばなかったのか、ギュスターヴは口を閉じた。むっとした表情を浮かべて息を吐く。
「フリン、行くぞ!」
一歩下がったところで事の成り行きを見守っていたフリンにぶっきらぼうに言い放つと、ギュスターヴは部屋を出ていった。フリンが肩を竦めた。
「はい、ケルヴィン。差し入れ」
フリンはその声にすぐには従わずに、ベッドの近くにきて本を一冊渡してくる。
「熱が下がって暇になった時用に」
「あぁ、ありがとう。しかし、動けるようになったらすぐ仕事に戻るつもりだ」
フリンの手から本を受け取ったが、それを読む余裕はないだろう。テルムに来てから大きな山はこえたとはいえ、まだやるべき仕事は沢山ある。おちおち寝ているわけにもいかない。
「ダメだよ」
フリンが首を横に振った。ふっと神妙な顔になる。
「ケルヴィンもわかってるでしょ? ギュス様、あれで結構心配してるんだから」
「……」
「じゃあね! 待ってよ、ギュス様〜」
ぱっと表情を戻して、フリンがパタパタと外へ向かう。視線を戸口から横に滑らせるとレスリーと目が合った。
「フリンの言うとおりよ。今はゆっくり休んでしっかり治さないと」
「……ああ、わかってる」
やれやれと息を吐く。
心配なら心配で素直にそう言えば可愛気があるのに……と思って、やっぱりあいつに可愛気など不要だと思いなおす。
全く、昔から変わらない。ひねくれ者め。
私はベッドに横になり、目をつむった。
First Written : 2025/11/23
