2023年3月、リアム編が完結しました。この話は私なりのリアム編の幕下ろし。
あれだけのことがあったんだからいい加減素直になれよ、という気持ちで書きました。
終焉というものは呆気なく訪れる。
じわりとした暑さがレスリーの額に汗を浮かばせる。ジャングルを模したそこは景色だけでなく気候もそのまま映し出していた。虚構なのか現実なのか。ここに来てからというもの、そのような出来事の連続で考えるだけ無駄のように感じた。
この空間を創り出していたと思われる神獣は既に倒した。主が居なくなれば消滅する類のものではなかったようで、リアムを先に向かわせた後でレスリーはケルヴィン達と共にこのジャングルの探索を続けていた。何か手がかりがあるかもしれない。何が役に立つかわからない今、出来る限りのことをしたかった。
それなりに歩き回ったもののジャングルという以外にとりわけ目立ったことは無い。そろそろリアムの後を追うべきかと同行者を振り返ったところ、彼女は異変を察知した。
「ケルヴィン!」
彼の姿がかすんでいる。霧がかかっているわけでは無い。ケルヴィンの手足が色を失い、その後ろの景色が透けて見える。
「レスリー!」
異常に気がついたケルヴィンが駆け寄ってくるのが嫌にゆっくり見える。
(そんな……!)
終わりは突然だ。
(まだ、なのに)
身体が重さを無くしたかのように頼りなく感じる。
そよ風が吹くように、それは一瞬のことだった。