ひらりひらり

サガフロ2発売22周年記念に。
幼馴染達の今昔。


 

 さらさらと花びらが散る。薄桃色のそれがひらりとカップの紅茶に波紋をつくった。
「おい! 枝をそんなに揺らすな」
 身なりの良い少年が樹上の少年へと声をかける。そんな彼は気にした様子もなく、ぶらぶらと何も履いていない足を振りながら手に持った林檎に齧り付いた。
 また別の小柄な少年が彼を見上げる。枝の隙間から漏れ出る光に眩しそうに目を細めた。
 その樹の下で大きなクロスを広げ、籠からサンドイッチを取り出して並べていた少女は、降ってくる花びらを見つめて微笑んだ。

 

 それはとあるうららかな日の一幕。
 

 月日は経ち、ここはハン・ノヴァの庭園。
 鋼の十三世はひとつの樹を見上げていた。満開に花を咲かせたそれは薄桃色をしていた。
 (ここでも咲くのだな)
 ひらりと舞落ちてきた花びらを手のひらで受け止める。
「ギュス様~」
 背後から声がして振り返ると、フリンが走ってくるところだった。その後ろに籠を持ったレスリーと、彼女と何やら話しているケルヴィンが続く。
「ギュス様、一緒に食べよう」
 と、フリンがはしゃぎ、
「せっかく良い天気だから、外でどうかと思って」
 と、レスリーが言う。
「ケルヴィンも来るとは意外だな」
 ギュスターヴが笑うと、
「忙しくさせてる当人が何を言うか。たまにはいいだろう」
 ケルヴィンもまた笑った。
 
 (それもそうだな。)
 あれから随分遠くまで来てしまったけど、変わらないこともきっとある。

 さらさらと花びらが舞い散る。

 


First Written : 2021/04/01