待ち人来ず?

ヤーデ時代の幼馴染達。
ロマサガRSにケルヴィンがなかなか実装されないので書いた話。


 

 屋敷の前の樹の上で一人の少年がブラブラと足を揺らしながら遠くを見つめていた。幹にもたれてつまらなさそうにしていたかと思えば、ふと前のめりになったり、また小さく息をついて近くの葉を指先で弄《いじ》って遊ぶ。
「どうしたの?」
 落ち着きのないギュスターヴの様子を訝《いぶか》しみ、レスリーは樹の根元で彼を待つように座っているフリンに尋ねた。フリンはレスリーと同じように樹上のギュスターヴを見やり、それから道の先を眺める。遠くにちらと人影が見える度にギュスターヴが身動《みじろ》ぎをするのがわかる。フリンは彼に気づかれないようにそっとレスリーに顔を寄せると彼女に耳打ちする。
「たぶん、ケルヴィンを待ってるんだと思う」
「ケルヴィン?」
 囁《ささや》き返し、ああと彼女は思い至る。レスリーはヤーデ伯の屋敷で姿を見かけていたから気にならなかったが、確かにケルヴィンはここのところ忙しくしていてこちらには来ていなかったはずだ。それで、と零《こぼ》れた忍び笑いが聞こえたのか、ギュスターヴはちらりとレスリーに目をやった。
 すると、彼は突然そこから飛び降りた。
「フリン、行くぞ!」
「え? でもギュス様、今……」
 機嫌を損ねたのかと思ったが、フリンの戸惑う声を聞くとどうやら違ったようだ。先程まで彼らが眺めていた通りに見知った影があった。
 引き止める声を無視してさっさと離れるように駆けていくギュスターヴをフリンが慌てて追いかける。レスリーはこちらに向かってきた人物を一人で迎える形になった。
「ケルヴィン」
「レスリー。さっきギュスターヴがいた気がしたが?」
 二人が去った方角を眺めて、ケルヴィンは首を傾げた。レスリーはただ苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 


First Written : 2021/12