雄弁なのは

グレクロ。
エンディング後か、しばらく旅した後の二人。


 

 後に続いていたはずの小さな足音が途絶えた。振り返ると同時に涼やかな声が彼の名前を呼ぶ。
「グレイ」
「どうした」
 クローディアは彼をひたりと見つめ返す。その瞳から読み取れる感情は乏しい。それでもそこに少しの揺らぎをグレイは感じた。
「私、気づいてしまったの」
「……」
 言葉こそ少ないものの、物事を真っ直ぐに伝えるクローディアにしては珍しい物言いだった。彼女は小さく息を吸う。
「……ガイドはもう必要ないわ」
 グレイはじっとクローディアを見た。そして、
「そうか」
 と一言発した後、また口を噤んだ。
 そうか、とその言葉が彼の胸に沈みゆく前に、
「でも、」
 と、クローディアが再び声を発した。その声がいつもより大きく響いたことに彼女自身が驚いたように肩を震わせた。
「でも、護衛は必要、なのかもしれない」
 言葉は普段の声音より頼りなく萎む。
「……そうか」
 グレイがまた一言、口にした。

「クローディア」
「……?」
 名を呼ばれ、彼女は目線だけで先を促す。グレイは小さく息を吸った。
「お前が要るというなら、いる。それだけだ」
 クローディアは瞬き、一言、
「……そう」
 と、応えた。
 
 グレイもクローディアも、口元が緩んだことに気づきはしなかった。

 


First Written : 2023/02/07