カンバーランドの兄弟の短いお話。
三人可愛くて好きです。
「まだお見えにならないのでしょうか」
頬を上気させたトーマはくるりとした目を窓の外へと向ける。何度目かわからない言葉にゲオルグは苦笑した。
「トーマ、はしゃぎすぎだぞ」
「だって久しぶりですから」
サイフリートによる国家転覆の策謀を阻止してから一年。危うく仲違いして国を盗られそうになった兄弟はそれを教訓として、定期的に集まることにしていた。此度はその会合にバレンヌ帝国の皇帝も招かれている。カンバーランドの情勢も落ち着いた今、政務を抜きにしてようやく皇帝をもてなすことができるのだ。
「二人ともこちらでお茶でもお飲みになったらどうですか?」
ソフィアがテーブルに茶器を並べながらくすりと笑った。
「ゲオルグお兄様も落ち着いて。そんなに扉の方を見ていなくても、陛下が来られたら誰かが呼びに来ますよ」
まさに扉を注視していたゲオルグは妹に指摘されてぐっと息を詰めた。先にちょこんと席についたトーマに続いて、しぶしぶとテーブルへと向かう。
「……そういうソフィアはやけに荷物が多いな?」
ティーカップを口へと運ぶ妹の傍らに気づき、ゲオルグは大げさに眉をひそめてみせる。ソフィアは悪戯がバレた子供のようにふふっと頬を赤らめた。
「皇帝陛下には美味しいものを沢山召し上がっていただきたくて、つい」
「兄上も姉上も、はしゃぎすぎですよ」
トーマが仕返しとばかりににっこりする。
「はしゃいでは、ない」
「似た者同士ですね」
「早く皇帝陛下に会いたいなぁ」
三人が顔を見合わせて綻んだところで——
コンコンコン。
ノックの音に彼らは一斉に扉の方を向いた。
First Written : 2025/02/15