守りたい背中

2022年4月のサガフロ2発売23周年記念日に南の砦ギュス様が実装されて書いた話。
護衛者ヨハンをむしろ守ってしまうディフェンダーギュス様でしたね。


 

 異界の戦士。
 王族でもなく、鋼《はがね》の覇王でもなく、それは彼を解き放つ肩書きなのかもしれない。ギュスターヴ十三世として名乗りを上げた頃から、己の立場故に自由に剣をふるう場を抑制されてきた彼が、水を得た魚のように生き生きとするのも無理はなかった。
「それにしても、無茶しすぎでしょう」
 レスリーは両手のひらをギュスターヴの腕に走った傷にかざしながら文句を言う。空気中に現れた小さい水の珠がふわりと吸い込まれるように傷を包み込んでいく。
「俺が受けた方が、術の影響が少ないだろう」
 ギュスターヴの言い草にレスリーは眉を寄せた。頑丈なのはいい事だが、攻撃を一手に受けていたらいくら命があっても足りない。
 それでもこうして鎧を脱いで、大人しく治療を受けているだけマシなのか。
 不服そうなレスリーにギュスターヴは苦笑する。回復術をかけてもらう時にはいつも怒っていたな、と彼より過去の時空から召喚された彼女を懐かしく思う。
 それに、と彼は続けた。
「若者を守るのは年長者の務めだからな」
「何よ、年上ぶっちゃって」
「悪かったって」
「反省してるように見えないんだけど?」
 レスリーは、おしまい、と言って立ち上がった。彼女より随分と歳を重ねたギュスターヴを見つめる。見知った彼より随分と長くなった髪、広くなった肩幅、太くなった腕。
 それでも、と彼女は思う。
(歳をとっても変わらないわね、あなたは……)
 自分の命をもう少し大切にして欲しい、と彼女は願うのだった。

 


First Written : 2022/04/10