少年期、青年期、壮年期スタイルのギュス様がレスリー(20代)に会った時の話。
「ギュスターヴ?」
桟橋でぼんやり川を眺めていたら、見知らぬ美人に名前を呼ばれた。
聞き覚えがないはずなのに、どこか懐かしい声に振り返ると、少し離れたところに女の人が立っていた。母上ではない、それよりは若い。それでも自分よりも五歳以上は歳上に見えた。
綺麗な人だな、と思った。長い金の髪が風に揺れて頬にかかっている。それを指で払う仕草が過去の記憶を刺激する。唇に笑みをたたえて目を細める姿に、言いようのない既視感をおぼえる。
「ギュスって昔はこんな感じだったかしら?」
「あぁ。こう見ると、この頃はまだ可愛気があるな」
彼女の後ろから別の人物が姿をあらわす。暑い日なのに首元にきっちりとスカーフを巻き、見るからに貴族然としたこの男は、例え姿が自分が覚えているものよりずっと歳上でもわかる。
「ケルヴィン! それに」
——思い出した。グリューゲルを出て以来会っていない彼女が何故ここにいて、どうしてケルヴィンと知り合いなのかは全くわからないが。
「なんでお前らだけそんなにでかいんだよ?」
顔を見合わせて笑ってる二人に妙に腹が立ってきて、頬に熱が集まるのを感じた。