ねだる - 1/4

『キスをねだる』をテーマに短編4作。
最初の1作を書いた時にこのシチュだとケルギュスっぽいなぁと思ったことから派生。
ギュスレス2編、ケルギュス1編、フリギュス1編です。後半ちょっとギャグっぽくなります。


 

1作目:ギュスレス

「キスして」
 いきなりの言葉にレスリーは自分の耳を疑った。
「そうしたら頑張れるから」
 どうやら聞き間違いではなさそうだった。この人は一体何を言ってるんだろう、とレスリーは呆れ顔になる。かたや、言葉を発した人物は組んだ手の上に顎を乗せてにこにこと微笑んでいる。その笑顔が少し憎たらしい。彼の前には机があり、その上には読みかけの書類が重なっている。
「何をいってるのよ」
 軽くあしらおうとしたら、机の反対側からギュスターヴが身を乗り出して、レスリーの手を掴んだ。
「本気だぞ」
 真剣な眼差しにレスリーの身体が固まる。鼓動が跳ね上がった。
「……なんてな」
 レスリーが戸惑うのをみて、ギュスターヴはおどけた顔になってぱっと手を離す。その刹那、レスリーはギュスターヴの首の後ろに両手を回して引き寄せ、自分の唇で彼の唇を塞いだ。一拍ののち、離れるとレスリーはぷいと顔を背ける。
「……しっかり仕事してよね」
「……」
 ギュスターヴは惚けたように自分の唇を手で撫でた。
「なぁ、やっぱり仕事は後にして…」
「ダメです」
「……はい」
 きっぱりと言い切るレスリーにギュスターヴは情けない顔をした。