1235年頃。ギュスターヴとフリンとケルヴィン。
鳥のさえずりが聞こえる。親鳥を待つ小鳥達が今か今かと空を見上げ鳴き続けている。
ギュスターヴはそれを見上げるでもなく、逆に地面を見て微動だにしない。フリンはそんなギュスターヴの少し後ろで、同じように地に目を落としている。傍から見たらおかしな光景だった。
ケルヴィンは彼らに近づくと、その視線の先に何かがあることに気づき、はっと小さく息を飲んだ。それは小鳥の亡骸であった。巣から落ちてしまったのだろうか。誰の助けを得ることも無く、動かなくなってしまったそれをギュスターヴはじっと見つめていた。彼の顔からは感情は読み取れない。ただ頭上の喧騒とは対象的な静寂がそこにあった。
「可哀想に」
ケルヴィンは呟いた。彼の存在に気づいたギュスターヴが目をあげる。二人は視線を結ぶが、彼の瞳は暗い色を浮かべるだけで、すぐに目はそらされた。
「行くぞ、フリン」
「あ、待ってよギュスさま」
「おい……」
ギュスターヴはケルヴィンに何かを言うでもなく、その場を立ち去ろうとする。フリンは彼ら二人を見比べて困った顔をしたが、ギュスターヴの後を追う前にケルヴィンにこそっと耳打ちしていく。
──ケルヴィン、お願い。ギュス様は祈りの言葉が言えなかったんだ。
ああ、とケルヴィンは納得して頷いた。
「全てのアニマよ。この憐れな小鳥のアニマを受け入れたまえ」
ケルヴィンは口にして目を伏せた。
First Written : 2021/06/07