FF4。エッジ→リディア。
不覚だった。俺は完全に油断していた。
多分少し疲れていたんだ。そうでなければ、忍者の奥義をを受け継いでいる俺が、こんな不意打ちを食らうなんてありえない。
「どうしたの、エッジ? 顔が怖いよ? お腹でも痛いの?」
「うわっ!」
顔を下から覗き込んできた緑色の影に思わず変な声が出てしまった。俺の声にびくりと肩を震わせた彼女――リディアは、訝しげにじっと目を合わせてくる。その瞳に自分の姿が見て取れるぐらい、近い。とてつもなく近い。
「っ、ちょっと考え事をしてただけだ」
「ふーん?」
上背は勿論俺の方があるが、今は座っているから、リディアが少し屈むようにしている。そこからぐっと顔を寄せてくるもんだから、吐息が顔にかかりそうだ。両手を膝の上にのせているせいで誇張される胸元に思わず視線がいってしまう。しかし、リディアはあくまでそれに気づかない。
身体は大人なのに年齢の割に情緒が育っていないのだ。幻界では人間の機微は学べなかったということか。セシルがよくこいつをまるで小さいガキのように扱うことがあるが、それは出会った時の年齢のせいばかりでもなさそうだと、妙に納得する。
召喚士の服なのか詳しくはないが、色っぽい姿なのに無自覚とくる。これではこちらの心臓が持たないというものだ。
はぁ、とため息がもれる。頬に手を伸ばしたいところだが、そのやわらかな髪を撫でるに留めておいた。
「早く大人になれよ?」
「え、ちょっと子供扱いしないでよ」
「はいはい」
そうやって口を尖らせているうちはまだ子供だろうよ。
百戦錬磨のエッジ様でもこんなタイプは初めてだ。また困った奴を好きになってしまったもんだと、長期戦を覚悟した。
First Written : 2021/12/28