年初めの光 another time

初日の出話のギュスレスバージョン。

 


 

 祝い事ならではの喧騒がひと段落つき、辺りには冬の夜らしい静寂が戻っていた。ある者は、酒類を嗜んだ高揚からすぐさま眠りの世界に旅立ち、ある者は静かに家族と語り合い夜を過ごす。
 ギュスターヴは人知れず、部屋を抜け出した。どうしてもと言って聞かない護衛も離れたところで待機させ、城壁をのぼる。夜風は寒く、彼の外套をはためかせた。見ると、濃藍色の空の一点が少し明るくなっていた。
「ギュス……」
「……レスリーか」
 あらわれた人物を振り返ることなく、ギュスターヴはその名を口にした。一人で過ごすつもりだったが、やはりごまかしきれないかと胸の内で苦笑いを浮かべる。そしてどこかで彼女が来ることを予想していたことも。誰も通すな、とは敢えて言ってなかった。
 レスリーはギュスターヴにそっと近づくと、横に並び立つ。
 空が薄青に、水平線が赤味を帯び、茜色が広がっていく。やがて一筋の光が漏れ出で、その眩しさに二人は目を細めた。
「新しい日ね」
 レスリーが、口にした。
「うん、そうだな」
 ギュスターヴがそう応えると、レスリーは彼に向き直った。自分の肩に巻いていた厚手のストールをはずし、ギュスターヴの肩にかけると、その両端をぎゅっと手繰り寄せて、踵をあげた。
「今年も、そばにいるわ」
「……ああ」
 離れていく優しい感触を逃さないように、ギュスターヴは己の外套でレスリーを包み込んだ。


First Written : 2022/01/01