心は曇る
視線が注がれている。
帽子をおさえる彼女の細くやわらかな腕に。歩く度に揺れる衣から垣間見えるすらりとした脚に。胸元のなめらかな素肌に。
——だから気乗りしなかったんだ。
グレートアーチでの調査の際はそこでの一般的な装いをする、と人づてに聞いた時にも良い気はしなかった。でも仕事ならば止めることもできない。訝しく思われるのも嫌で、口に出すこともできなかった。
それでも最終的に承諾してしまったのが悪いのか。その姿を一目見てみたいという己の欲望に負けてしまったのがいけない。
意識して背けなければ見とれてしまう。心の内を悟られてしまうのはどうしても避けたかった。
大胆な服装の割に淑やかな所作のそのアンバランスさが、また周りの男どもを惹き付けるのに気づいていないのか。視線が集まるのを感じる度に微かな苛立ちがつのる。
本当はとっくに自覚しているんだ、この気持ちは——だと。