* * *
愛剣の柄をギュスターヴは握り直した。
怪物——巨大な瞳を持つ魔物を倒したのも束の間、空間全体を震わせる声と共に現れた異形のもの。
戦いは激しさを増していたがリアム達は奮闘していた。あと少し決め手があれば押し切れる、その手応えを掴みかけた時、『神』は不敵に笑った。
突如、泡に覆われたような奇妙な感覚に襲われる。鋼の剣の重ささえ感じとれないような浮遊感。
(あぁ、こうも呆気ないものなのか)
薄れゆく感覚にギュスターヴの胸には恐れより先に虚しさが浮かぶ。
いつ来るかもわからない終わりの時を異界の戦士は皆覚悟していたはずだった。なのに、彼の頭をよぎるのは。
(まだ、だったのに)
——まだ、君に
それは泡が弾けるような一瞬。