2作目:ケルギュス
「キスして」
いきなりの言葉にケルヴィンは思わず振り返った。
「そうしたら頑張れるから」
どうやら聞き間違いではなさそうだった。こいつは一体何を言ってるんだろう、とケルヴィンは眉を寄せる。かたや、言葉を発した人物は組んだ手の上に顎を乗せてにやにやと笑っている。
「馬鹿なことを言ってないで早く仕事しろ」
「はいはい」
つまんないな、と仕方なくギュスターヴが手元に書類に目を戻す。すると、その書類に別の影がおちた。
不審に思ったギュスターヴが顔をあげると同時にケルヴィンが机の上に片膝を乗せた。そのままギュスターヴの襟をつかんで引き寄せると、自分の唇を彼のものに押し付ける。
「!」
一瞬の後、ギュスターヴの襟から手を離してケルヴィンが突き放すように体勢を戻す。
「……これでいいか?」
「……っ!! お、お前ほんとにやるやつがいるか?!」
ギュスターヴは真っ赤になって自分の口元を手で隠す。
「お前がしろと言ったんだろ?!」
負けずに真っ赤になったケルヴィンが言い返した。