4作目:ギュスレス
「キスして」
「!!」
突然の言葉にその場にいた三人は言葉を失って凍りつく。そのうちの一人であるギュスターヴをレスリーはじっと熱っぽい目で見つめる。
「ねぇ、ギュス」
「れ、レスリー?」
レスリーに距離を詰められてギュスターヴは後ずさった。彼女らしからぬ行動に心臓がおかしな動きを始める。
「ま、まさかさっきのモンスターか?!」
「あ、確かここに解毒薬があったはず…!」
ケルヴィンがハッとして思いつき、フリンが腰につけた袋をゴソゴソとあさった。
「あ、これだ! ギュスさま、これ。
……ちょっと待った方がいい?」
フリンが小瓶を取り出して見上げると、レスリーはギュスターヴの首に腕を絡めていた。心無しか少し嬉しそうなギュスターヴにフリンの語尾が揺れる。
「ば、馬鹿者! 早くよこせ!」
赤面するギュスターヴにフリンが駆け寄りその小瓶を手渡した。
「飲み薬か。その……私たちは背を向けてるからだな……」
「あ、うん。ギュス様飲ませてあげて」
しどろもどろになるケルヴィンにならって、フリンもギュスターヴ達から顔を背ける。
「レスリー?」
ギュスターヴが名前を呼ぶと嬉しそうにレスリーがにっこりと笑う。
(心臓に悪い…!!)
ギュスターヴは小瓶の蓋を開封すると、中の液体を口に含んだ。彼女の唇を開かせ、自分の唇で塞いで流し込む。こくんと喉がなるのを確かめて唇を離した。
レスリーはしばらくとろんとした顔をしていたが、パチパチと何度か瞬きをすると、急に真っ赤になってギュスターヴの胸を突き飛ばした。
「!!」
両手で顔を隠して狼狽えるレスリーに、背を向けていたフリンが気づいて彼女のところに戻ってくる。
「あ、レスリー。大丈夫?」
「え?! 私、何を?!」
「その、なんだ…うん、何もなかった。な、ケルヴィン?」
尻もちをついたまま、ギュスターヴが頭をがしがしとかき混ぜてそっぽを向いた。
「あ、ああ…」
ケルヴィンは頷いたが、彼の顔は耳まで真っ赤になっていた。
First Written : 2021/05/14