ギュスレスでうたたね。
ギュスターヴはレスリーの目の前に座っていた。テーブルの上で組んだ腕に片頬を預けて彼女は瞳を閉じている。彼女の肩が規則正しく上下しているのを彼はぼんやりと眺める。
部屋を訪れたら返事がないので、中を覗いてみると彼女がこのようにうたた寝していた。しばらく慌ただしい日々が続いてたのでここのところは遠目で見かけるだけだった。彼女も疲れが溜まってるのだろうか。
いつしかレスリーがソフィーの部屋で寝てしまったことがあった。ソフィーが寝ていた間にレスリーも今と同じような体勢でうたた寝をしてしまっていた。ソフィーが先に目を覚まし、彼女も疲れているのだろう、と寝台へ運ぶように母に促された時は、抱き上げた瞬間に目を覚ましてしまったことを思い出す。
(動かさない方がいいんだろうな)
ギュスターヴは彼女を見つめながら、自分の腕の上に顎をのせた。耳を澄ますとすぅすぅと微かな寝息が聞こえる。静かな部屋だと自分の鼓動の音までやけに耳に響く。
ギュスターヴは手を伸ばして彼女の髪を撫でようとして、そして止めた。触れてしまえばこの時間が終わってしまうかもしれない。それはなんだか勿体ない気がした。
今はとりあえずこのままで。彼女が目を覚ますまで――
レスリーはうっすらと目を開いて瞬きをした。次の瞬間、ハッとなり身体を起こす。知らないうちに寝てしまったらしい。時間を気にしてふと見回すと目の前に彼がいて彼女は驚いた。
伏せていると長く感じる睫毛、微かに上下する肩に彼が寝ているのだと気づく。いつからそこに居たのだろう、と考えていると彼が身動ぎした。
「レスリー?」
呟くように聞こえた名前に返事をしていいものか悩んでいるうちに彼の瞳が開いた。寝ぼけ眼のまま彼が顔をあげる。
「ギュス?」
声をかけると、ギュスターヴは笑みを浮かべた。
「おはよう」
「…おはよう」
日が傾きかけた時間にしては相応しくない挨拶を口にして二人は笑った。
First Written : 2021/05/29