* * *
「それであいつはうまく誘えたのか?」
「先程出かけていったわ」
ギュスターヴは窓から外を見た。月明かりが照らす中庭にケルヴィンとマリーの姿を探そうとする。答えたレスリーもちらっと外をのぞいたが、二人の影は見えなかった。
「それは、せっついたかいがあったな」
「あまり引っ掻き回すと却ってうまくいかなくなるわよ」
レスリーはニヤニヤと笑うギュスターヴを振り返る。ケルヴィンの想いを考えればこそだろうが、マリーが離縁してからまだ少しの時間しか経っていないのだ。静かに見守った方がいいこともある。
「で、どうだ? 俺達も外を散歩しないか?」
「まさか、あとをつけるわけじゃないでしょうね?」
先程の話が聞こえていなかったかの様子に、レスリーはギュスターヴを軽く睨みつける。
「まぁそう言うな。今宵は月が……」
ギュスターヴの言葉はそこで途切れ、僅かな沈黙が訪れる。二人の間に流れた微妙な空気を終わらせるように、レスリーはゆっくりと静かに息を吐いてから、微笑んだ。
「今宵は、月がとても明るいものね」
「……ああ」
空には満ち満ちた月が浮かんでいた。
First Written : 2021/11/22