* * *
潤んだ瞳からこぼれ落ちたものを目にした刹那、言葉で言い表すことがかなわない激情がこの身を貫いた。
実際、身体はその衝動に動きかけた。理性が押しとどめなければ、彼女をこの腕にかき抱いていただろう。息を飲みこんだ際に同時に襲ってきた罪悪感に、伸ばしかけた手を引き寄せた。
失意に震える彼女に、ぶつけていい想いではない。蔑まれるべきはこちらだというのに。ギュスターヴは明言こそしなかったが、カンタールとの離縁を進めるきっかけになったのは間違いなく自分の恋慕のせいだ。
今、彼女が手が触れるぐらい近くにいる事実に、心浮き立ってしまうのがひどく醜く感じる。彼女の心に寄り添いたいと願うのに、その権利はあるのだろうか。彼女の苦しみを分かつことなど許されるのだろうか。
痛いほど握りこんだ指先を開き、せめてもの慰めを手のひらに託した。
First Written : 2022/09/19